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サルベージ髙松のよもだ

脱税事件の法廷に立った国税査察官 ~Part2~
2013/10/31

 

≪前回まで呟いていました「脱税事件の法廷に立った国税査察官」の続きですが、
その前に、ちょっとお付き合い下さい≫

 

【信託会社の紹介】

今年4月以降、サルベージ髙松は沈没船のように、鳴りを潜め、お休みをいただいていました。久方振りに登場させていただきます。別に、健康を害していた訳でもなく、愚痴を呟かなくてもいいほど、幸せであったわけでもありません。

ひとつ、申し上げるとすれば、信託業法の改正により、信託業務を従来の信託銀行以外ができることになったことを受け、今後、日本が否応なく迎える高齢化・老人夫婦のみ家庭・独居老人の増加・認知症の発症等々に応えるために、財産管理さらには、墓場までの安心を提供するための「管理型信託会社」の設立準備に参加していました。
おかげさまで、本年、7月31日に関東財務局長の承認(法律的には内閣総理大臣が承認)を得て、「ほがらか信託株式会社」がスタートし、私は、同社の監査役に就任しました。

皆様の中で、以下のような、心配や不安がございましたら、「管理型信託」を利用する選択肢があります。
関心がございましたら、「ほがらか信託株式会社」及び同社の社長が代表を務めます「弁護士法人中村綜合法律事務所」のホームページをご覧ください。
管理型信託は、受託した財産を運用しませんので、損失による財産の減少はありません。手数料をいただいて、財産を確実に守るのが目的です。したがって、利殖をお考えの方には、まったく、不向きです。委託した財産は、信託会社自体が倒産しても守られます。

  1. 病気や障害などを持つ家族がおられ、自分の死後、生活を維持し、財産を守れるか心配である
  2. 自分の死後、妻(夫)が一人でお金を管理できるか不安である
  3. 自分の死後は、特定の人(配偶者、第三者)に特定の財産を確実に引き渡したい
  4. 自分の死後、相続問題で争いが起きないように準備をしておきたい
  5. ひとり暮らしあるいは夫婦所帯のため身近に相談する人がいない
  6. リフォーム詐欺や振り込め詐欺に遭わないか、とても心配である
  7. 加齢や認知症などが原因で自分自身で判断が出来なくなったらと先行きがとても心配だ
  8. 先祖代々の資産、一代で築き上げた財産を離散させないように子から孫への承継も自分の存命中に決めておきたい
  9. 葬儀費用は子供たちに負担をさせたくないので自分で準備しておきたいが、葬儀業者に代金を前払いするのは不安だ
  10. 賃貸物件を所有しているが、賃料の回収が面倒でテナント管理も大変だ
  11. 近いうちに大きな買い物(自宅の新築・建替えなど)をする予定があるが、代金を業者に前払いするのは不安だ
  12. 急に父親が亡くなったが、親族皆多忙で相続手続きをする時間がない
  13. 近ごろ、知力・体力の衰えを感じ、お金の管理をはじめ資産管理の煩わしさを感じる

【信託を利用した場合の、なるほどメリット~ある葬儀社さんの呟き】

自分の葬儀を、ある葬儀社に頼み、葬儀費用500万円を葬儀社に預けていた方が亡くなった。そこで、子供とかの相続人が葬儀社に来て、当該葬儀社で葬儀をしないで500万円を持って帰ることが、以外と多いそうだ。遺族はその500万円を懐に入れ、50万円程度の葬儀で済ませるのだそうだ。ところが、葬儀社と提携した信託会社に葬儀費用を委託しておくと、遺族に500万円を持って行かれることなく、予定どおりの葬儀が可能なのだ。

 

≪さて、いよいよAの脱税事件に戻り、本脱税事件の公判廷内、
と公判廷外とのまったく違うやり取りなどを呟く≫

 

Aは、東京国税局査察部の査察調査(私の行った調査)段階において、さらには、東京国税局査察部からの告発を受けて行われた、東京地方検察庁特別捜査部(特捜部)の検事捜査においても、脱税の事実を全面的に認めていた。

Aは検事捜査段階で逮捕され、第1回公判日(裁判)まで、身柄を拘束されていた。そして、第1回公判においても、脱税の事実を認めたため、釈放され、自由の身で裁判に臨むことになった。

ところが、釈放後の第2回公判で、これまでの、供述を全面的に翻し、脱税をしていないと全面否認に転じた。そして、私、髙松査察官の利益誘導(調べる側に都合のよい供述をすれば、おまけしてあげるなどとの甘い言葉)によって、嘘の供述をさせられたと主張し、1年余りに亘って、A側の証人として、「髙松査察官がAに利益誘導をしていたのを聴いた等」の証言を法廷でする証人が10名以上出廷した。

そこで、裁判官が、「いくらなんでも10人以上の証人が髙松査察官の利益誘導を語っている。髙松査察官だって、言われっぱなしでは納得いかないだろう。髙松査察官にも、言いたいことを言う機会を持ってもらいましょう。」となって、証人として出廷することになった。

≪検察側証人尋問≫

まず、検察側の証人尋問の日は、同じ側に立つ者同士のやり取りだから、坦々と進んだ。さて閉廷の時、Aは被告人席から、証人席の私のところに来て「べたべた」した。裁判官は、まだ、法廷に居た。Aの主張は「髙松査察官とは、出来レースだった」だから、法廷で「べたべた」したなら裁判官が「出来レースの心証」を持つかも知れない。

≪弁護側証人尋問≫

第2回目は、弁護側の証人尋問だから、弁護士が何を聴いて来るか分からない。私には、やましいところはなかったから緊張はしなかった。さて早めに法廷内に入ると、大きなテレビとビデオ装置が置いてあるではないか。さて、弁護側はどんなビデオを出してくるのか。身に憶えがないとはいえ、焦るものだ。あとで分かったことだが、前の裁判で使ったものを片付けてなかっただけだった。

さて、爺ちゃん弁護士は、開廷しても、質問を始めなかった。どうも、私に対する質問ペーパーがみつからないので焦っていたようだった。10分位のロスだった。その時、勝ったと確信した。後で知ったのだが、その爺ちゃん弁護士は、なんでも争って、いつも負けるので有名な人だったそうだ。

国税の調査の世界では、納税者に、調査の邪魔をしないで、資料提供をスムーズにしてもらい、質問に対しても、嘘偽りなく答えてもらい、調査がスムーズに進むようにしてもらうことを「調査に協力してもらう」と言う。私は、証言の際、国税の世界では「調査に協力」の意味で使うと証言をした後に、「協力」という言葉を何回も使った。閉廷した後、老弁護士は、同行していた若い女性弁護士に「今日は、証人から協力してもらったとの証言を引き出したから、大成功」と、言っていた。「協力」=「利益誘導」と組み立てたようであった。老弁護士、組み易し。

≪判決結果≫

地方裁判所の判決は、判決文の中に「髙松証言は信用できる」の連発だった。実刑判決。記憶では懲役3年くらいだったと記憶している。高等裁判所も同様であった。脱税事件で実刑3年は、かなり、重いものであった。

≪エピソード≫

捜査をした検事を、私は、よく知っており可愛がってくれた人だったので「髙松、Aを逮捕するぞ」と言われた時、「自供していることだし、何とか在宅の調べで勘弁してやってもらえませんか?」と頼んだが、検察には、検察の事情があったようだ。

拘置されている場所に、追加の調べで通った。Aは、調べ室まで手錠をかけられ連れてこられ、○○番と番号で呼ばれていた。脱税は、重罪だと理屈では理解できるが、脱税者を刑務所に送ることが仕事のマルサでさえ、脱税の罪で手錠までかけなくてもいいのにと思ったものだ。

拘置所の調べ室は大きいガラス張りの窓があり、刑務官が時々覗いている。調べ室で暴れだした時のためだ。Aはヘビースモーカーだった。調べに同行した後輩の査察官がカバンを開けたところ、Aの目の前にタバコとライターが、転がった。Aは、おもわず「髙松さん、1本吸わして」と懇願したが、刑務官が覗くので、吸わせてあげられなかった。窓がなければ、吸わせてあげたと思う。

調べの時、Aは、腹巻の中にしのばせていた、若い女性との間に生れた女の赤ちゃんの写真を見せてくれた。「会長さんに、そっくりですね」というと嬉しそうだった。写真は違反のようだったが、刑務官に言いつけるほど、私も野暮ではなかった。

≪法廷内と法定外≫

法廷内では、私とAは、戦闘状態だった。ところが、裁判当日、地裁の玄関に居る私を見つけたAは、ニコニコしながら駆け寄ってきて、「髙松さん、こんな事(証人にひっぱり出される)しょっちゅうでしょ。」と言った。私は、「初めてですよ。」と返した。

≪ここでAの衝撃の告白≫

「悪いねえ、髙松さん。実は、今、大きな仕事に取り掛かっているんですよ。実刑は間違いないでしょうし、今から3年間刑務所に行ってきたら、年齢から言って出所後、今までのように仕事をするのはもう無理だと思います。今、手掛けている大きな仕事を仕上げて、刑務所に行きたいのです。今、裁判で争っているのは、判決確定を先延ばしするためなのですよ。勘弁してね。」だった。

これを聴いて、私は、妙に納得というか、Aに理解を示した。したがって、勿論、法廷内での証言の際は、「法廷外では、Aは、裁判引き延ばしのために争っていると言っていた」などという、野暮な証言はしなかった。

そして、Aは、後日、刑務所に3年行った。

≪Aに確かめたいことが一つある≫

結果的に、Aが裁判で争った主張はことごとく排斥され、判決文は「髙松証言は信用できる」で終始した。

しかし、一つの事実だけは、Aの主張が正しいのではないかと、今でも思っている。今、Aの所在は分からないが、見つけ出して聴いてみたい。

Aは、裁判を長引かせるために、荒唐無稽な主張をバナナの叩き売りのように並べ立てたため、私がAの主張が正しいのではないかと思っている一つの主張も、その他の嘘の主張と同様の心証を裁判官に与えたのではないかと思っている。Aの主張がその部分で認められたとしても、Aの量刑は変わらなかったとは思うが、今でも胸につかえている。

おしまい